難題10問とともに公開された62ページの失敗記録
OpenAIのAstraが数学・理論計算機科学の難題10問の解決結果を発表した際、失敗したアプローチをまとめた62ページの文書も公開しました。4つの失敗類型と結果の実効範囲を読み解きます。
AI・テック失敗したアプローチだけをまとめた62ページの文書も同時公開
8月1日、OpenAIが次期モデル「Astra」の内部バージョンによって、数学および理論計算機科学の難題10問を解決したと発表しました。韓国国内の報道で注目された金額は約289万ウォンでした。これは、OpenAIが解法を見つけるために消費したトークン数をSol APIのレートで換算すると約2,000ドルになるという説明をウォン換算した数値です。モデルの開発や人間による検証まで含めた総研究費という意味ではありません。
ところが、その日に公開された文書は一つだけではありませんでした。成果をまとめた249ページの論文があり、機械が検証する形式証明のリポジトリがあり、さらにもう一つ、62ページの文書が公開されていたのです。タイトルは『How the Ideas Came Together』、「いかにしてアイデアが集まったのか」です。
読者の皆さん、この文書を開いてみると少し不思議な感覚を覚えます。正解の話がほとんど出てこないのです。代わりに「なぜこのアプローチでは駄目だったのか」という話が延々と続きます。
今回の発表で斬新なのは、AIが答えを見つけ出したという事実よりも、答えにたどり着く過程で捨て去ったアプローチを別の文書にまとめて公開した点にあります。
まず、10問とは何なのか
内容をすべて理解する必要はありません。どのような種類の問題なのか、感覚さえ掴めれば十分です。
| # | 問題 | わかりやすく言うと |
|---|---|---|
| 1 | 高次元球充填 | 球を隙間なく詰めるとき、最大でどれだけ詰め込めるか |
| 2 | 2値・球面符号 | エラーに耐えうる符号を最大でいくつ作れるか |
| 3 | 非ソフィック群 | 無限の対称構造を有限の並べ替えで模倣できないケースはあるか |
| 4 | コンヌの剛性予想 | ある構造をその影だけを見て復元できるか |
| 5 | 算術回路の複雑さ | 特定の計算に最低何回の掛け算が必要か |
| 6 | 量子並列繰り返し | 同じゲームを何度も繰り返させると勝率は急激に下がるか |
| 7 | 最近接ベクトル問題 | 格子の中で最も近い点を見つけるのはどれほど難しいか |
| 8 | エルハート体積予想 | 特定の条件を満たす図形が持ちうる最大体積はいくらか |
| 9 | 多色ラムゼー数 | 色をいくら増やしても、結局は同色の三角形ができてしまうのか |
| 10 | 極値グラフ理論 | 特定の形状を避けながら、線を最大で何本引けるか |
3番と4番はそれぞれ1999年、1980年代から未解決だった問題であり、9番と10番はエルデシュが遺した問題リストの183番、146番、180番です。答えの形も様々です。新たな証明もあれば、長年真だと信じられてきた予想を覆す反例もあります。
cdn.openai.com一つ細かい点に触れておきます。OpenAIは成果を「10問」と数えていますが、ウォークスルー文書は12の章で構成されています。5番が回路と論理式に、10番が2本の極値グラフ理論の論文にそれぞれ分かれているからです。形式証明リポジトリでも12のエンドポイントを10の結果としてまとめています。大きな問題ではありませんが、「10問」という数字は自然な単位ではなく、編集された単位であることは知っておくとよいでしょう。