レコード会社のAIライセンス契約とNetflixの開発チーム買収、何が違うのか?
UMG・WarnerのAI音楽契約とNetflixのInterPositive買収を取り上げました。学習・ダウンロード・クリエイターの同意条件を区別し、制作現場の決定権についての筆者の見解をまとめました。
ビジネスレコード会社はライセンスを結び、NetflixはAI開発チームを買収
Netflixは2026年3月5日、俳優兼監督のベン・アフレックが設立したInterPositiveを買収すると発表しました。映画制作に必要なAIツールを開発する会社です。
音楽業界でも変化がありました。AI音楽サービスのSunoとUdioを相手に訴訟を起こしていたレコード会社のうち、UMGとWarnerが2025年下半期からライセンス合意を発表しました。AI学習と音楽生成にどのような権利を認め、どう補償するかを定め始めたのです。
私はこうした事例を見て、エンターテインメント企業がAIの利用条件を自ら定めようとする動きに関心を持ちました。訴訟、ライセンス契約、開発チームの買収はその手段です。ただし、すべての企業がこの順序で進むわけではありません。守ろうとする権利と必要な技術に応じて、複数の手段を併用することもあります。
音楽を学習に使う権利をめぐり争った
2024年6月、Sony・UMG・Warner系列のレコード会社はSunoとUdioを相手に著作権侵害訴訟を提起しました。保有する音源を許可なく複製し、AI学習に使用したという主張でした。Suno相手の訴状には、既存の録音と類似した結果物が出たという事例も含まれています。訴状の主張は当時の原告側が提示した内容です。
Sunoは2024年8月の声明で、公開インターネット上の音楽で学習したと明らかにしつつも、その学習が著作権侵害に該当するという主張には反論しました。公開された音楽を収集できることと、その利用が許されるかどうかは、別の争点だったわけです。
法的紛争のさなかも事業は続きました。Sunoは2025年11月の投資発表で、24億5,000万ドルの投資後評価額で2億5,000万ドルを調達したと明らかにしました。過去2年間に音楽を作った利用者は累計約1億人にのぼるとも説明しています。この数字は会社が発表した累計利用経験であり、月間で活動する人数ではありません。
映像業界では、俳優のデジタル複製をどう扱うかが重要な問題でした。2023年のSAG-AFTRAストライキ後の契約にも、AI関連の保護条項が盛り込まれました。音楽の学習データ訴訟と俳優の労働契約は、当事者も権利も異なりますが、創作にAIを使う際に誰の同意が必要かを扱っているという点で、併せて見る価値があります。
合意は学習と利用条件を変える契約
UMGとUdioは2025年10月29日の合意を発表しました。両社の訴訟を整理し、許可を得た音楽で学習したAIを利用する新プラットフォームを2026年に展開するという内容です。音源と音楽出版に関するライセンスも含まれています。
Udioは新サービスへ移行する間、既存サービスを制限した形で運営することにしました。当時の利用者向け告知では、ダウンロードの中止も伝えられました。したがって、この合意は企業間の金銭的な問題にとどまりません。利用者が作った楽曲をどこで聴き、外部へ持ち出せるかにも影響を与えました。
Warnerは11月19日にUdio、11月25日にSunoとそれぞれ合意を発表しました。両契約とも許可を得た音楽を使うサービスへの移行を扱っていますが、細部の条件は同じではありません。
WarnerとSunoの発表には、アーティストと作曲家が自分の名前・外見・声・楽曲をAI音楽に使用させるかどうかを選択できる条件が含まれています。Sunoは2026年に新ライセンスモデルを投入し、既存モデルを終了する計画も明らかにしました。ダウンロードは有料アカウントに許可しつつ、月間上限を設ける方向です。
これらの合意がすべての紛争を解決したわけではありません。契約は参加した当事者と定められた権利範囲に適用されます。大手レコード会社が合意したという事実だけで、ほかの権利者まで同意したとは言えません。個々の音楽家にいくらがどのような基準で支払われるのかは、実際の契約と精算をさらに確認する必要があります。
Netflixは制作ツールを作るチームを迎え入れた
NetflixによるInterPositive買収は、技術と開発人材を社内に確保した事例です。Netflixは、チーム全体が加わり、アフレックがシニアアドバイザーを務めると公式発表で明らかにしました。
アフレックの説明によると、InterPositiveは撮影現場で生じる問題に合わせてツールを開発しました。管理された撮影現場で独自の学習素材を作り、背景の差し替えや照明の不備といった、制作過程で修正が必要な問題を扱いました。画面の視覚的な論理と編集の一貫性を保つことに重点を置いています。
こうした作業は、撮影後に行う編集・カラーグレーディング・視覚効果などのポストプロダクションとつながっています。監督と撮影監督が望む結果をより良く作れるよう支援するという構想です。自社の撮影素材を確保したという点はデータの出所を管理するうえで役立つでしょうが、それだけですべての著作権や労働に関する争点が解決するわけではありません。
発表の1週間前にあたる2月26日、NetflixはWarner Bros.買収競争でこれ以上価格を引き上げないと表明しました。大型の買収競争から退いた後にAI企業の買収を発表したタイミングは目を引きます。ただし、両者の時期が近いというだけの理由で、InterPositiveがWarner Bros.の代替だったと断定することはできません。
Oswarldの視点

私は、音楽会社のライセンス契約とNetflixの買収を、それぞれ異なる選択として見ています。レコード会社は自らが管理する音楽の利用条件と収益を定めようとしており、Netflixは制作過程に必要な技術を自ら確保しようとしているのです。
音楽会社の選択には、既存の音楽やアーティストの名前がAIサービスでも価値を持つはずだという期待があります。利用者が好きな歌手の声や楽曲で新しい音楽を作りたいと思うなら、権利を確保したサービスにビジネスの機会が生まれるでしょう。ただし、AIで作られた音楽が増えたとき、既存の音楽への支払い意欲がどう変わるかは、もう少し見守る必要があります。生成量や累計利用者数だけでその答えを出すのは難しいでしょう。
Netflixについて私が注目しているのは、アフレックの役割です。俳優や監督として働いてきた人物がツールを設計し、買収後も関わり続けるという点は、制作現場の要求を技術に反映させるという説明に説得力を与え得ます。
労使交渉の時期も併せて見る必要があります。SAG-AFTRAは2026年2月9日から新契約の交渉を開始し、既存契約は6月30日に失効すると案内しています。私は、こうした状況下でNetflixがクリエイターの関与を強調することが、交渉相手の懸念を和らげる助けにもなり得ると見ています。買収の隠れた目的が労使交渉だったと確認されたわけではなく、これは発表の意味についての私の解釈です。
もちろん、著名なクリエイターが関わったからといって、現場で働くすべての人の利益が保証されるわけではありません。ツールを使うかどうかを誰が決めるのか、成果物を誰が修正し責任を負うのか、削減された時間とコストの恩恵が誰に還元されるのかを確認する必要があります。実際の制作で品質をどれほど高めるのか、雇用にどのような影響を与えるのかも、まだ見極める必要があります。
私がこうした事例を追い続けたいのは、AIを使うかどうかよりも、その利用条件が具体化しつつあるからです。レコード会社や技術企業、制作会社だけでなく、実際に音楽を作り、撮影を行う人々もその条件を定めるプロセスに参加できるかどうかが重要だと考えています。
参考資料
- NetflixによるInterPositive買収発表、2026年3月5日。
- UMG・Udio合意発表、2025年10月29日。
- Warner・Udio合意発表、2025年11月19日。
- Warner・Suno合意発表、2025年11月25日。
- 米国著作権局のAI報告書案内。学習を扱ったPart 3は2025年5月9日にプレリリース版として公開されました。個別紛争に関する裁判所の判決とは区別して読む必要があります。
- SAG-AFTRAの2026年交渉準備案内、2025年12月18日。

筆者アン・グァンソプ(安光涉)は世宗大学校経営学科教授であり、INLEVEL9のリードコンサルタントである。大学では経営データ管理、ビジネスアナリティクスなど統計・データ分析を教える一方、現場ではGTM戦略とAI戦略コンサルティングを率い、技術とビジネスの接点を設計している。AI対話システムの記憶アーキテクチャ(HEMA)研究で学術論文を発表したほか、日々グローバルなAI論文をキュレーションするDaily Arxivプロジェクトを運営している。高麗大学校技術経営専門大学院修士課程とKMBAを修了した。著書に『考えを任せる人々:ホモ・ブレインレス』がある。

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