会議と決裁が仕事を遅らせるとき、1944年の文書から浮かんだ考え
OSSのサボタージュマニュアルを読みながら、コンサルティングの現場で見た不必要な会議と承認手続きを振り返ります。
ビジネスコンサルティングをしながら、3人で済むはずの会議に10人が座っている光景や、すでに決定した案件を改めて確認するせいで仕事が遅れる光景を目にしてきました。メール一通を送るのにも3段階の承認が必要な組織もありました。
そのため、1944年に米国の情報機関OSSが作成した『Simple Sabotage Field Manual』を読んだとき、見覚えのある箇所が多くありました。決定を先延ばしにし、不必要な会議を開き、承認手続きを増やせという内容が書かれていたからです。私は2022年にもこの文書をブログで紹介したことがあります。
戦時中に相手国の活動を妨害するために作られた文書と、平凡な会社の仕事の進め方が似ているという点が興味深く感じました。今回この文書であらためて考えてみたいのは、業務の助けになるはずの手続きが、いつから仕事を遅らせるようになるのかという点です。
戦時工作文書に記された会議と決裁のやり方
OSSはCIAの前身にあたる米国の情報機関です。1944年1月17日に発行されたこのマニュアルは、敵国や占領地の市民が日常のなかで戦争遂行を妨害するよう仕向けるための文書でした。CIAの説明によれば、OSS長官のウィリアム・ドノバンは内容の一部を公開し、ビラや放送などを通じて伝えるよう指示したといいます。
文書にはさまざまな分野が登場しますが、ここでは5章の中の「組織と生産に対する一般的な妨害」の項目を見ていきます。そのうち組織・会議と管理者に関する指針をまとめると、次のとおりです。以下の内容は原文を要約したものです。
- 決定を先延ばしにする。 すべての事案を定められた手順どおりに処理させ、案件をできるだけ大きな委員会に回し、前回の会議で決定した事案を再び議論させる。
- 成果と報酬を食い違わせる。 仕事のできない人に不当な昇進を与え、仕事のできる人を差別したり根拠なく批判したりする。
- 不必要な手続きを増やす。 より重要な仕事があるのに会議を開き、重複した書類を作成し、一人で承認できる事案に三人の承認を求める。
原文は、日常的に生じる判断ミスや非協力的な行動が遅延を引き起こしうるという点に注目しています。そうした行動を意図的に増やすことで、相手の時間と人員を無駄にさせようというわけです。

今の会議文化と比較する際に注意すべき点
Asana Work Innovation Labが発表した2024年の調査では、実務担当者が非生産的な会議に費やしたと答えた時間は週あたり3.7時間でした。2019年の1.7時間より118%増えた数値です。管理者は週あたり5.8時間で、2019年より87%増加しました。
この数値は調査回答者が感じた会議の負担を示しています。すべての会社で会議時間が同じ割合で増えたという意味ではありません。また、非生産的な会議が多いという事実だけでは、組織がなぜそうなったのかまでは説明できません。
ゲイリー・ハメルとミシェル・ザニーニは2016年のHBR寄稿で、米国の過剰な官僚主義のコストを年間3兆ドル以上、当時のGDPの約17%と推定しました。これも著者らの推定値として読む必要があります。
こうした資料とマニュアルを並べて見ると、手続きが業務を遅らせうるという問題について考えることができます。ただし、現代の組織の非効率がすべて同じ原因で生じているとか、すべての会社が自然とマニュアルの指針に従うようになっているという結論にまで進む根拠は乏しいといえます。
会議には、互いに異なる情報をすり合わせ、責任を定める機能があります。決裁には、誤りや不正行為を防ぐ目的もあります。必要な手続きかどうかを判断するには、その手続きが実際にどのような役割を果たしているかを見なければなりません。
手続きを減らす前に目的を確認する
この文書を逆から読めば、点検すべき箇所を見つけることはできます。しかし、委員会を大きくせよという指針の反対が常に小規模チームだ、という形で当てはめるのは難しいものです。必要な専門性が多かったり利害関係が複雑だったりする案件は、多くの人による検討が必要な場合もあるからです。
会議であれば、何を決めるのか、決定に必要な人が出席しているのか、終わった後に誰が実行するのかが明確でなければなりません。単なる現状共有であれば、文書で伝えるほうがよい場合もあります。毎回以前の決定を蒸し返すのであれば、新しい情報が生じたためなのか、そもそも決定権者が不明確だったためなのかを確かめることができます。
決裁も同じです。各承認者がそれぞれ異なるリスクを検討しているのであれば、複数の段階が必要な場合があります。全員が同じ内容を形式的に確認しているだけなら、重複を減らす余地があるでしょう。段階の数だけを数えるのではなく、各段階で何が変わるのかを確認することです。
成果に対する評価も、業務の目的とつながっていなければなりません。実際の貢献と評価がずっと食い違っていると、メンバーは仕事をきちんとやること以外に何をすれば認められるのかを考え込むようになります。この部分は、マニュアルの指針を組織運営の点検項目として読むに値する箇所だと思います。
Oswarldの視点
マニュアルは、人にわざと愚かに振る舞わせるためには動機と刺激が必要だと説明しています。この箇所を読みながら私は、今の組織で誰かの悪意をまず疑うことはあまり役に立たないだろうと考えました。メンバー一人ひとりが慎重に処理しようとしていても、承認と確認が繰り返されれば、業務全体は遅くなりうるからです。
私が現場で見てきた会議や決裁も、メンバーの誠実さだけでは説明が難しいものでした。10人が同じ会議に出席しなければならない理由、すでに決まったことを改めて確認しなければならない理由を、業務の構造の中に探る必要がありました。
データを扱う立場からすると、時間の損失をどう記録するかも重要です。会議の開始と終了は簡単に測れますが、その会議のために先送りされた他の業務や、決定が遅れたせいで逃した機会は、同じ表にはなかなか表れません。記録がなければ、そうしたコストが繰り返し生じているという事実に気づきにくくなります。
私は、会議をどれだけ減らしたかということとあわせて、案件が上がってから決定されるまでにどれくらいかかるか、決定後に実際に実行されるかを見たいと思っています。短時間で終わった会議も、何の決定もないまま次の会議に持ち越したのなら、仕事を速くしたことにはならないかもしれないからです。
80年前の文書を組織診断の正解にする必要はありません。ただ、慣れてしまって見過ごしていた手続きを見直すきっかけとしては使えます。「もともとこうしてきた」という説明からもう一歩進んで、今もその手続きが必要な理由を確かめるということです。
参考資料と関連リンク
- CIA, The Art of Simple Sabotage、2019年4月1日。OSSマニュアルの背景と主な内容を紹介しています。
- OSS, Simple Sabotage Field Manual、1944年1月17日。Project Gutenbergで全文を読めます。この記事で扱った部分は5章の(11)項目です。
- Asana, The rise of unproductive meetings and the hangovers they leave behind、2025年4月8日。2024年の調査結果を説明した記事です。
- Gary Hamel & Michele Zanini, Excess Management Is Costing the U.S. $3 Trillion Per Year、2016年9月5日。
- あなたにもできる!組織を台無しにする現場マニュアル — 私が2022年にこの文書を紹介しながら書いた記事です。

筆者アン・グァンソプ(安光涉)は世宗大学校経営学科教授であり、INLEVEL9のリードコンサルタントである。大学では経営データ管理、ビジネスアナリティクスなど統計およびデータ分析を教える一方、現場ではGTM戦略とAI戦略コンサルティングを主導し、技術とビジネスの接点を設計している。AI対話システムの記憶アーキテクチャ(HEMA)研究で学術論文を発表し、毎日グローバルなAI論文をキュレーションするDaily Arxivプロジェクトを運営している。高麗大学校技術経営専門大学院修士課程とKMBAを修了した。著書に『考えを任せる人々:ホモ・ブレインレス』がある。

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