シリコンバレーが「静かに」中国製AIを使っている
a16zの80%は、投資相談に訪れる企業のうちオープンソースモデルを使う場合についての観察です。中国製モデルの価格・公開方式と、私がGTMで見る導入条件を検討します。
AI・テック中国製モデルを選ぶ企業たち
Airbnbのブライアン・チェスキーは、2025年10月のインタビューでQwenを多く活用していると述べ、速度とコストを高く評価しました。中国企業が作ったモデルを米国のサービスに導入する事例が出てきたわけです。
私はこの変化において、モデルの性能と同じくらい導入条件を見るべきだと考えています。開発者は自社サービスに必要な性能を確認したうえでコストを計算し、修正したり自前で運用したりできるかも検討します。QwenやDeepSeekのようにモデルの重みを公開する選択肢が増えれば、比較対象も変わってきます。重みとは、モデルが学習した結果を収めた数値です。これをダウンロードできれば、外部APIを呼び出す方法のほかに、自前のサーバーで運用する方法も検討できます。
a16zが語った80%の範囲

a16zのゼネラルパートナーであるマーティン・カサドは、2026年1月20日に公開された対談で、自身に投資相談に訪れる企業について語りました。そのうちオープンソースモデルを使う企業に限れば、約80%が中国製モデルを使っているという観察でした。
この数字は、シリコンバレー全体のスタートアップを調査した占有率ではありません。カサドが出会った企業のうち、オープンソースモデルを使う場合という条件が付いています。ここに別の調査から出たオープンソース使用率を掛け合わせて、スタートアップ全体の中国製モデル使用率を計算することもできません。互いに同じ企業を調査したわけではないからです。ただし、投資の現場で中国製モデルを採用した企業に頻繁に出会うという証言としては意味があります。
Hugging Faceのダウンロードを分析したShayne Longpreらの研究でも、中国製モデルの拡散が確認できます。この研究は、2024年8月から2025年8月の間に作られたモデルだけを比較した場合、中国製モデルのダウンロード比率が米国製モデルより高かったと報告しています。累積ダウンロード全体で米国製モデルすべてを上回ったという意味ではありません。
ダウンロード数は、開発者たちの関心と活用を見るための資料です。同じ人が何度も受け取ったり、自動的にダウンロードされたりすることもあるため、そのまま利用企業数や有料サービスの占有率として読んではいけません。
価格と運用方式が選択を変える
初期のスタートアップでは、API費用が積み上がる速度が重要です。ユーザーを一人増やすたびにモデル呼び出しが増えるなら、モデル選択がサービスの価格と利益に直接影響を与えるからです。
DeepSeekは2025年9月にV3.2-Expを発表した際、API価格を50%以上引き下げたと明らかにしました。こうした値下げは、開発者に既存モデルを使い続けるかどうかを再計算させます。もちろん料金表だけを比較して決められるわけではありません。同じ作業における回答の正確さと速度、リトライ回数がどうかも併せて見る必要があります。
重みをダウンロードして自前で運用する方法もあります。この場合、外部企業に呼び出しごとの料金を払う代わりに、GPU、サーバー運用、障害対応の費用を負担します。利用量が多く運用能力があれば有利になり得ますが、自前で設置したからといって費用がゼロに近づくわけではありません。利用量が少ないチームには、APIのほうがより簡単で安価な場合もあります。
公開された重みがもたらす選択肢
Qwen3はApache 2.0ライセンスでモデルの重みを公開しました。開発者は許可された条件のなかでモデルをダウンロードし、修正してサービスに適用できます。モデルを自分たちの環境で運用したり、特定の作業に合わせて調整したりしたいチームには重要な違いです。
ただし、中国製モデルだからといってすべてが同じ方式で公開されているわけではありません。同じ企業でも、モデルごとに条件が異なることがあります。重みの公開と、学習データ・学習コードまで全部公開することもまた別物です。導入しようとするモデルのライセンスと提供範囲は個別に確認する必要があります。
GPTやClaudeのようにAPIを中心に提供されるモデルと比べると、公開された重みを持つモデルは運用方式の選択肢が広くなります。反対に、設置と運用を自ら担わなければならない負担も生じます。私は、どちらがより開放的かという評価で終わらせるよりも、その選択肢が実際に顧客の導入課題を解決するかどうかを見るべきだと考えています。
新しいモデルや改善版が頻繁に出てくることも、開発者に影響を与えます。DeepSeekは2025年9月にV3.2-Expを出した後、12月に正式版のV3.2を発表しました。開発者は同じ提供元の新バージョンも試しながら、コストと性能を改めて比較することになります。だからといって、中国企業は毎週、米国企業は半年に一度リリースすると単純に分けられるわけではありません。重要なのは、リリース回数よりも新バージョンが自分の作業において向上したかどうかです。
限られた資源で効率を高める方法
チップの輸出規制と中国製モデルの発展を併せて見ると、興味深い点があります。DeepSeekの研究陣は、V3を開発したインフラについて説明する際、NVIDIA H800 GPU 2,048個を使用したと明らかにしました。H800は規制を一切受けない旧世代チップではありません。NVIDIAの開示によれば、2023年10月に拡大された輸出許可要件にはH800も含まれていました。
DeepSeekの研究陣は、一度の計算にモデル全体を使う代わりに一部の専門家(エキスパート)だけを活性化するMoE構造、メモリ使用量を減らすMLA、低精度の数値で計算するFP8訓練などについて説明しました。私は、資源の制約がこうした効率化の必要性を高めた可能性があると見ています。ただし、輸出規制が技術発展を引き起こしたと断定するには、別途の根拠が必要です。
小型の機器でも実行できるモデルも増えています。たとえば画像生成モデルZ-Image-Turboは60億個のパラメータを使用し、公式の説明では16GB VRAMのコンシューマー向けGPUでも実行できるとされています。ここでVRAMとは、GPUが使うメモリのことです。一般的なノートパソコンにシステムメモリ32GBさえあれば同じ条件になるという意味ではありません。公式資料にある1秒未満の生成速度も、H800を基準にした結果です。
こうしたモデルが出てくると、大きなサーバーを借りる前に自分で試してみられる人が増えます。どの機器でどの程度の速度で動くのかまで把握して初めて、実際に導入コストがどれだけ下がるのかを判断できます。
Metaが唯一の代案ではない
米国の公開重みモデルを語るとき、Llamaがよく登場します。しかし米国と欧州にも、Gemma、Mistralなど別の選択肢があります。中国製モデルが広がっているからといって、公開モデル市場全体が一方に傾いたと見るのは難しいでしょう。
Llamaもまた独自のライセンスを使っています。Qwen3とLlamaを両方とも「オープンソース」とひとくくりに呼んだとしても、実際の利用条件まで同じではありません。企業が今後どんなモデルを公開するかという見通しと、いま実際にダウンロードするモデルに適用される条件は区別すべきです。
公開モデルを作る企業は、性能競争と同時に、開発者に自社モデルを使い続けてもらうための競争もしています。開発者が一つのモデルに合わせてサービスを作り、運用経験を積むと、次の製品でもそのモデルをまず検討する可能性が生まれます。私が関心を持って見ているGTMのポイントはここにあります。
Oswarldの視点
私はこの現象を米中の国家間競争としてだけ読むと、重要な変化を見落とすと考えています。
GTM戦略を策定するなかで、ずっと見てきたパターンがあります。性能が最も優れた製品だけが市場を変えるわけではありませんでした。より多くの人が簡単に導入でき、費用を負担できるようにした製品も、利用範囲を広げてきました。PCは個人がコンピューターを所有して使えるようにし、AWSはサーバーを直接購入せず必要な分だけ借りて使う方式を広めました。
中国の公開重みモデルにも、似た戦略が見て取れます。モデルを自前で運用できるようにし、API価格を下げれば、開発者が製品を作り始める際の負担が減ります。そのモデルを利用するサービスが増えるほど、開発資料や運用経験も蓄積されていきます。性能順位とは別に、導入を増やす方法です。
私が懸念しているのは、韓国がこの競争でどんな役割をさらに確保できるかということです。半導体とモデル開発ですでに積み上げてきた基盤はありますが、それがそのまま開発者や顧客の選択につながるわけではありません。モデルをうまく作ることと、人々がそのモデルでサービスを作るようにすることは、それぞれ別に解決すべき課題です。
「中国製モデルがよくなった」というニュースで終わらせたくありません。どんな作業に使えるようになったのか、導入と運用にどれだけかかるのか、私たちはこれをどう活用し、あるいは競争できるのかまで見る必要があります。
私なら、次のAIツールを選ぶとき、まず実際の業務を入れて試してみます。その結果と総費用を比較し、データ処理方式とライセンスが自分たちの条件に合っているかも確認するでしょう。作った企業の国籍だけで選ぶよりも、こうした条件を具体的に検討するほうが、製品作りに役立つと考えています。
参考資料
- ブルームバーグ:ブライアン・チェスキー インタビュー、2025年10月21日
- a16z:マーティン・カサド対談、2026年1月20日
- Longpreら:The ATOM Project 公開モデルエコシステム研究
- DeepSeek:V3.2-ExpとAPI価格引き下げ
- DeepSeek:V3.2発表
- DeepSeek研究陣:訓練インフラと効率化
- NVIDIA:2023年10月の輸出規制関連開示
- Qwen3公式リポジトリ
- Z-Image-Turbo公式モデルカード
- Llama 4ライセンス

筆者アン・グァンソプ(安光涉)は世宗大学校経営学科教授であり、INLEVEL9のリードコンサルタントを務める。大学では経営データ管理、ビジネスアナリティクスなど統計・データ分析を教える一方、現場ではGTM戦略とAI戦略コンサルティングを率い、技術とビジネスの接点を設計している。AI対話システムの記憶アーキテクチャ(HEMA)研究で学術論文を発表したほか、毎日グローバルなAI論文をキュレーションするDaily Arxivプロジェクトを運営している。高麗大学校技術経営専門大学院修士課程とKMBAを修了した。著書に『思考を委ねる人々:ホモ・ブレインレス』がある。

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