Googleが一度も建設されたことのない原子炉を選んだ理由
検証済みの技術と迅速に建設できる技術は異なるという、Googleの選択から読み解きます。
ビジネスハイパースケーラーが検証済みの大型原発ではなく未検証の原子炉を選ぶ理由
2026年3月4日、米国原子力規制委員会(NRC)がワイオミング州ケメラーに建設予定の原子炉1基の建設許可を出しました。ビル・ゲイツが設立したテラパワーのナトリウム冷却高速炉1です。約40年ぶりに出た商用非軽水炉の承認であり、その数週間後には実際に地面を掘り始めました。
同じ頃、米国で着工中の大型原発は0基でした。設計も完了し、許認可の道筋もあり、すでに2基を完成させた実績のあるウェスチングハウスのAP1000が存在するにもかかわらずです。
読者の皆さん、電力が最も切迫している企業、すなわちGoogle、Amazon、Microsoftのようなハイパースケーラーが、検証済みの大型原発ではなく一度も建設されたことのない炉型を選んでいます。これは彼らが冒険を好むからではありません。西側諸国において「検証済みの技術」という言葉が、もはや「早く建設できる技術」を意味しなくなったからです。
米国には現在、大型原発の工事現場が1か所もありません
この状況を生み出したのは、ジョージア州のボーグル(Vogtle)3・4号機です。最終工事費は約360億ドルと当初想定の2倍以上に膨らみ、工期は15年を要しました。ジョージア・パワーの負担分だけでも110億ドルにのぼり、そのツケは住民の電気料金25%引き上げへと転嫁されました。
この1つのプロジェクトによって、米国の電力各社は新規大型原発の決定を先送りするようになりました。工事費の超過を防いでくれる保険商品など存在しません。超過分はそのまま財務諸表に直撃し、規制当局の前で料金引き上げの理由を説明しなければなりません。そのため、どの企業も「自社が最初の1社にはなりたくない」という姿勢を取っています。関心はあり、検討も重ね、意向書も書きます。ただ、最終投資決定を下さないのです。
BloombergNEFは、データセンター事業者と原子力関連企業の間で交わされた協力発表を51GW規模と集計しました。原発50基を超える規模です。しかし、この大半には拘束力のある電力購入契約2がなく、資金調達の発表もなく、NRCへの正式な申請書すら提出されていません。BNEFがこの51GWを将来予測にほとんど反映していないのはそのためです。
政府が手をこまねいているわけでもありません。むしろここ1年の米国の政策支援は過去最大級でした。原子力関連の大統領令が相次いで出され、NRCは申請書受理から18カ月以内に結論を出すと期限を明確に定めました。エネルギー省は大型原発10基の建設を後押しする融資コミットメントを打ち出し、2030年までに10基を着工状態にするという目標まで掲げました。
それでも動きません。今不足しているのは政府の支援ではなく、買おうとする需要です。「当社が建設します」と手を挙げる電力会社が存在しないのです。制度と資金はすべて整ったのに最初の買い手が現れない状況は、新製品を販売した経験のある方なら見覚えのある構図でしょう。アーリーアダプターがいなければ、どんなに優れた条件も書類の上に留まるだけだからです。
データセンター事業者と原子力企業の協力発表は51GWに達する一方、米国における大型原発の着工は0基です。この乖離こそが、現在の西側原子力市場の実態なのです。