OpenClawの検索関心と使用量を分けて見るべき理由
検索関心が減ったというグラフだけで、利用者が離れたと判断できるのでしょうか。OpenRouterの集計と、実際にツールを使ってみた経験を合わせて見てみました。
ビジネスOpenClawを検索する関心が減っています
2026年3月にお届けしたニュースレターで、中国を席巻した「ザリガニ・ブーム」を取り上げました。OpenClawというオープンソースAIエージェントがテンセント本社前に人々の行列をつくり、クラウドやメッセンジャー各社の関心を集めたという話でした。
2カ月が経った今、Google Trendsで見るOpenClawの検索関心は、ピーク時より低下しています。

上のグラフでは、openclawの検索関心指数が最高値の100から、最後の区間では約12まで下がっています。指数としては約88%の下落です。この値は選択した期間・地域における相対的な検索関心であり、検索件数や利用者数ではありません。Googleの説明にあるように、検索全体に占める比重を0〜100に換算した値です。
検索関心が下がったという事実と、人々がそのツールを使わなくなったという判断は区別する必要があります。すでにインストールした人は、名前を再検索せずに使い続けられますし、検索しただけの人は最初から利用者ではなかった可能性もあるからです。
四つの検索語のグラフが示すもの
上の画面は、全世界・過去1年間・ウェブ検索の条件で、openclaw、hermes agent、nemoclaw、agent aiを比較したものです。比較対象に入れた語によって、見え方も変わり得ます。
青い線のopenclawは急激に上昇してから下降し、期間平均は16と表示されます。赤い線のhermes agentの平均は1、黄色い線のnemoclawは0です。**0は検索が全くなかったという意味ではありません。**相対的な規模が小さい場合や、十分なデータがない場合にこう表示されることがあります。
緑の線のagent aiの期間平均は17です。この線も期間中に上下し、後半には上がってから下がる様子が見られます。OpenClawとは上昇幅が異なりますが、1年間ずっと一定だったとは言い難いです。
ここには、性質の異なる検索語が混在しています。OpenClawは個別のツール名であり、agent aiはより広い概念を探すときに使える表現です。
だからといって、agent aiひとつをAIエージェント市場全体の検索関心として見ることはできません。人々はAI agent、AIエージェント、あるいは他の製品名でも検索するからです。このグラフで確認できるのは、選んだ四つの表現の相対的な変化です。
Hermes Agentは、Nous Researchが開発した別のオープンソースエージェントです。NemoClawは、NvidiaがOpenClawを実行・管理するために提供しているソフトウェアです。検索関心が小さいという理由だけで、両者を失敗した模倣品としてまとめるのも適切ではありません。
実際の使用は別の資料で確認する必要があります
実際の使用状況を確認できる資料の一つが、OpenRouter1のトークン2処理量です。ただし、これもOpenRouterを経由して集計された利用量であり、すべての経路の使用を合算した数字ではありません。
MarkTechPostが5月10日にOpenRouterの順位を引用した記事によると、1日あたりの集計はHermes Agentが2,240億トークン、OpenClawが1,860億トークンでした。合計は4,100億トークンです。検索関心が減った時期にも、両ツールを通じたモデル呼び出しがかなりの規模で行われていたことを示す資料です。
同じ記事に出ているOpenClawの累積処理量は9.17兆トークン、GitHubのスター数は37万個以上でした。累積処理量はこれまでに積み上がった値であり、スターは関心を示した数です。どちらも、その日に活動した利用者数や、利用者が使い続けている割合を教えてはくれません。
OpenClawを取り巻く変化もありました。創業者のピーター・スタインバーガー(Peter Steinberger)氏は、2026年2月にOpenAIへの参加とプロジェクトの財団運営計画を発表しました。OpenClawでは、CVE3が付与されたセキュリティ脆弱性も公開されました。開発組織が変わることとセキュリティ問題は、利用者がツールを使い続けるかどうかを判断する際に考慮すべき要因です。
エージェントはファイルやアカウントにアクセスし、命令を実行できます。どのような権限を与えたか、外部から取り込んだ機能を信頼できるかを確認する必要があります。インストールが簡単であることと、会社の資料を任せる準備ができていることは別の問題です。
セキュリティ問題が新規インストールを躊躇させたり、既存の利用を減らした可能性はあります。しかし、ここで引用した集計だけでは、その影響を計算することはできません。少数の利用者がより多くのトークンを使っても総量は大きくなり得ますし、作業を何度も再試行した結果である可能性もあります。
検索指数は関心の変化を、トークンは集計されたモデル処理量を示します。利用者がどれだけ増えたか、作業がどれだけうまく終わったかは、別途確認する必要があります。
検索関心が減った背景として考えてみたいこと
検索関心が下がった背景としては、いくつかの点を考えられます。以下の内容は、変化の原因を測定した結果ではなく、ツールを導入する立場から私が確認している要因です。

**一つ目は、最初の好奇心が落ち着くことです。**新しいツールが知られると、インストールする気がない人でも名前を検索します。どんなツールかが分かった後は、検索する頻度が減るかもしれません。ただし、グラフだけでは検索をやめた人が誰なのかは分かりません。
**二つ目は運用コストです。**私はこの負担を特に重視しています。PDFを一度読んで答える作業と、読んだ後に整理・検討し、さらに修正する作業とでは、呼び出しの回数が変わります。モデルや作業方法によって差はありますが、繰り返しの呼び出しが増えればコストも大きくなり得ます。2026年4月4日から、Claudeのサブスクリプションの基本利用上限でOpenClawのような外部ツールを利用できなくなった変化も、コストを見直すきっかけになりました。
**三つ目は、選べるツールが増えたことです。**Anthropicは2026年3月、Dispatchとコンピュータ操作機能を公開しました。携帯電話で作業を指示し、デスクトップで実行する機能です。すでに利用しているサービスが必要な機能を提供していれば、別途エージェントをインストールする理由が減るかもしれません。ただし、対応環境や接続方式が異なるため、OpenClawのすべての作業をそのまま代替すると見るのは難しいです。
**四つ目は、実際の作業における限界です。**複数のアプリを行き来したり、長い作業を実行するエージェントは、途中で失敗することがあります。Anthropicもコンピュータ操作機能を発表した際、複雑な作業には再試行が必要で、直接接続より画面操作の方が遅い場合があると説明していました。ツールごとの作業成功率は、個別に確認する必要があります。ある製品の数値を、そのままOpenClawの性能として使うことはできません。
私自身も、2026年2〜3月のセキュリティ危機のときに直接影響を受けました。OpenClawをきれいに削除しようとしたのですが、グローバルNPMパッケージ、~/.openclawディレクトリ、ログファイル、バックグラウンドプロセスがすっきりと取り除かれなかったんです。そこで自分でOpenShearsという小さなCLIユーティリティを作り、GitHubに公開しました。インストールされたファイルと実行中のプロセスを確認して整理するためのツールです。作りながら、インストール後の管理と削除のプロセスも、製品を評価する際に重要だと感じました。
好奇心、コスト、代替手段、実際の使用経験は、いずれも合わさって影響を与える可能性があります。どの要因が検索関心の下落をどれだけ説明するのかは、まだ分かりません。導入を検討するなら、この四つを自分の業務に合わせて確認しておくと有用です。
期待が下がった後にも確認すべきことが残っています
ガートナーのハイプ・サイクル4は、技術への期待が過熱してから、現実的な評価に変わっていく過程を説明するモデルです。ガートナーは2026年1月の見通しで、企業がAIの収益性を検討しながら、既存のソフトウェア供給企業を通じて機能を導入すると見ていました。

ガートナーの見通しは、単独のAIプロジェクトよりも、使い慣れた製品に追加された機能の方が導入されやすい可能性があるという説明です。だからといって、期待が冷めた技術がすべて後で成功するという法則ではありません。
OpenClawについても、名前への関心が減ったことと、実際の活用可能性は分けて見る必要があります。既存サービスに似た機能が組み込まれることもあれば、自分でインストールして管理するツールを引き続き好む利用者もいるはずです。
どちらがより広く使われるかは、検索カーブ一つでは決まりません。利用者が使い続けるか、コストに対して作業がうまく終わるか、問題が起きたときに復旧できるかが、より直接的な判断材料です。
検索関心の下落は、さらに調査すべきシグナルです。失敗や定着を確定づける証拠として使うには不十分です。
Oswarldの視点
GTM戦略を扱ってきた中で、先に知られたツールと、後に顧客が使い続けるツールが違ってくることを見てきました。機能が似ているのであれば、インストール・決済・権限設定・保守が選択に影響します。OpenClawを評価する際も、こうした条件を合わせて見たいと思います。
クラウドコンサルティングにおいても、実際にどの作業をどれだけ実行するかが重要です。エージェントはモデル呼び出し以外にも、ブラウザ操作、ファイル処理、外部サービス連携といった作業を行います。そのため、運用コストにはモデル利用料に加えて、CPU・メモリ・ストレージ、そして管理にかかる時間も含めるべきです。検索関心が減ったからといって、こうしたコストや需要まで一緒に減ったとは言えません。
新しいツールや機能が次々と出てくる以上、一度の流行判断よりも、導入後の確認が重要だと考えています。OpenShearsを作った経験も、その点を考えさせてくれました。最初にきちんとインストールできることと同じくらい、自分の環境で継続して管理できるかを見る必要があるからです。
おわりに
OpenClawの検索関心が下がったというグラフを見ながら、私は次の三つを区別しようとしています。
- **検索関心:**上のGoogle Trendsのグラフで、OpenClawの相対指数はピーク時より低下しています。
- **集計された使用:**5月10日の報道に引用されたOpenRouterのトークン総量は、両ツールが使われていたことを示しています。利用者の増加率や継続率まで教えてくれるわけではありません。
- **今後の選択:**既存製品に追加された機能と、自分でインストールするツールのどちらが自分の業務・コスト・管理条件に合うのかを確認する必要があります。
私は今後数カ月、名前がどれくらい頻繁に言及されるかとともに、人々がどんな作業にエージェントを使い続けるのかを見ていこうと思います。使ってみた後に残る利用者と、実際に終えられた作業があってこそ、長く続く製品になるはずですから。
参考資料と関連リンク
主要出典
- 「Hermes Agent vs OpenClaw: Why Nous Research’s Self-Improving Agent Now Leads OpenRouter’s Global Rankings」、MarkTechPost、2026.5.10.:5月10日のOpenRouter順位と当時の数値を引用した記事です。
- 「Anthropic just shipped an OpenClaw killer called Claude Code Channels」、VentureBeat、2026.3.20.:Claude Codeのメッセンジャー連携機能を紹介した記事です。
- 「Anthropic to OpenClaw users: Pay up」、The Media Copilot、2026.4.6.:Claudeのサブスクリプション利用上限から外部ツールの使用が除外された変化を取り上げています。
- 「OpenClaw Security Crisis 2026: What Happened and What To Do」、Get AI Perks、2026.2.23.:OpenClawのセキュリティ問題を取り上げた2月の記事です。
背景知識
- Gartner、Worldwide AI Spending Will Total $2.5 Trillion in 2026、2026.1.15.:企業のAI購買方式と投資見通しを説明しています。
- 「Why does Gartner describe 2026 as a Trough of Disillusionment year for AI」、Christian & Timbers、2026.1.:ガートナーの見通しについての解説です。
Oswarldの作業
- oswarld/openshears:本文で触れた、OpenClawの痕跡を安全に除去するCLIユーティリティです。実行前にリポジトリの使い方や整理対象を確認できます。

각주
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OpenRouter:異なるAIモデル(OpenAI、Anthropic、Google、中国系モデルなど)を一つのAPIで呼び出せるようにする統合ゲートウェイです。公開順位は、OpenRouterを経由して集計される使用状況を示します。他のAPIやローカルモデルを通じた使用まではすべて含んでいません。 ↩
-
トークン(Token):AIモデルがテキストを処理する基本単位です。1つの単語、単語の一部、あるいは句読点などが1トークンになります。処理量には入力と出力が含まれるため、完成した文書のページ数にそのまま換算することはできません。 ↩
-
CVE(Common Vulnerabilities and Exposures):ソフトウェアで発見されたセキュリティ脆弱性に付与される公式な番号です。CVSSというスコアで危険度が採点され、9.0〜10.0は「クリティカル(Critical)」等級に当たります。実際の影響は、脆弱なバージョンやインストール・アクセス条件を合わせて見る必要があります。 ↩
-
ハイプ・サイクル(Hype Cycle):ガートナーが新技術の認知度の変化を5段階の曲線としてまとめたモデルです。「黎明期→『過度な期待』のピーク期→幻滅期→啓発期→生産性の安定期」という五つの段階を用います。個々の技術の成功を保証する予測法則ではありません。 ↩
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